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第一章<夏の思い出>
その1
「おはようございます!」
真っ黒に日焼けした少年が駆け寄り、帽子を取ってペコリと頭を下げる。
すぐ後ろから数人の集団が駆け寄ってきて
「おはようございます!!」
きちんと整列し、頭を下げる小ガク生たち。
「おっ!おはよう!」
いつもの朝の光景だ。
和人と小ガク生たち、そして大和が横一列に並んでバスが来るのを待っている。
キラキラと朝日が反射する海面が眩しく目を伏せる。
「・・・兄貴!」
「ん、なんだ?」
目に飛び込んでくる眩しい朝日を避けるように、伏し目がちに視線を横にずらすと、大和が何かを指差している・・・
「ほら!アイツだよっ」
「・・アイツ?」
指の指し示す方へ視線を向けると、一人の男がバス停へ近づいてくるのが見える。
「おいっ、指差すなっ!人様に失礼だろっ!」
あまりにも露骨に他人を指差す大和に対して苦言を呈すると、
片方の眉をあげて怪訝そうに大和が和人を見る。
「・・ったく、大丈夫だよ!」
「西園寺様おはようございます」
バス停までたどり着いた男性が挨拶する。
「おはようございます!」
「うっす!」
「みんな、おはよう」
「おはようございま~す!」
小ガク生たちとも笑顔で挨拶をする男性。
「なぁ、なかなかイケてるだろ?」
大和が耳元でつぶやく。
「ばか!聞こえるだろ!」
「西園寺様おはようございます」
運転手がにこやかに挨拶を投げかける。
「おはよう」
「うぃっす!」
学校に着くまでの数十分、バスに乗る全ての人と挨拶を交わし、
学校でも全ての学生、教授および関係者と挨拶を交わす・・・
生まれてこのかた毎日の事だ。
「・・・あ~っと、明日から夏休みに入るが、くれぐれも・・・・・」
今日最後の授業、すり鉢の底にある台で教授が挨拶を終え、講堂を出てゆく。
何人かの学生がそれを追いかける。
なんだか今日は朝からやけに体が重く感じた。
ちょっとだけ此処で休んで行こう・・・
と、机に顔を伏せると同時に、右肩に殴られた様な衝撃が!
「イタっ!」
思いっきり不機嫌な顔を作って横を見ると、大和がゲラゲラと笑って立っている。
「ア・ニ・キっ!」
「なんだ・・・お前か・・・」
「なんだ・・・?じゃねぇよっ!ビックリしただろっ!?」
「ビックリなんかしねぇよ・・・お前しかこんなことしねぇーし」
「兄貴!食堂いこっ!食堂~っ!」
ったく、俺の話なんて聞いちゃいねぇ・・・
「またかよ!ソッチにも食堂あるだろ!」
「ウチのはダメダメ!コッチのが良いのっ!」
大学と同じく高校も今日が終業日、
明日から同じく夏休みに入るのだが・・・
夏休みを前にして、コイツには一緒に遊びに行くとかの友達がいねぇのか?と、つくずく思う。
「なぁ、兄貴、俺この夏に本州へ旅行に行こうと思ってるんだけど、一緒に行かね?」
「ほっ、本州!?何しに?」
「何しに?って、出逢いでしょっ!出逢い!(笑)」
白い歯を見せて目をギラつかせてる大和に、その本気度が伝わってくる。
「俺は、行かねぇ・・・」
「えーっ!!なんで?なんで?」
なんだか、今日は疲れてるせいか、頭が回らないというか、この夏のプランまで想像できてないというか、そんな計画を立ててた大和に呆れたというか・・・
「俺は、行く気ない!」
キッパリ話を切り上げて、早く家に帰って寝る事しか、今は考えつかなかった。
ふてくされる大和が、帰り道やバスの中でも必死に説得を試みてきたが、
俺は今それどころじゃ無かった・・・
自分の部屋に帰ると、そのままベットにゴロンと寝っ転がった・・・・
どれほど眠ったのだろう・・・・
部屋の電気が点いたのを感じて、固まった上下の瞼をギュッと力を入れて見開く。
「和人さま、お体の調子はいかがですか?」
執事の雅哉が心配そうにのぞきこむ。
「・・大丈夫だよ、ありがとう・・」
「本当ですか?何かありましたら何でもおっしゃってくださいね」
雅哉は、トレイに乗せたグラスを此方へ差し出しながら、心配そうな表情を浮かべている。
「大丈夫だよ、本当に」
グラスを手に取り飲み干した。
「さようですか・・・無理をなさらないでくださいね」
優しい雅哉の声は、何だかいつも以上に優しく感じる。
「大和さまが、大変心配なさってますよ」
雅哉が部屋を出る時に言った言葉で、
疲れのせいとはいえ、大和の話をまとも聞いてやらなかったことを反省した。
「まっ、話でも聞いてやるか・・・」
「大和居るかー?」
部屋の中でドタバタと騒がしい音がして、ドッ!ドッ!ドツ!と、大和らしい大きな足音が近づいてきて扉が開く。
「なっ!兄貴!大丈夫なのかよ?」
扉の隙間から顔だけを覗かせた大和が額に汗を浮かべながら聞いてくる・・・
「さっき雅哉が持ってきた『宝珠薬』飲んだからな!それより、お前こそ、大丈夫かよ?」
汗が噴き出して止まらない大和を見て、逆に心配になる。
「宝珠飲んだなら大丈夫だな、良かった!良かった!あはは・・・」
ぎこちなく笑う大和・・・
「何だよ、中に入れろよっ!」
「いっ!?今??」
「そうだよ!」
「あっ、ちょっと、待って!!」
「別に、良いじゃん!開けろって」
「あーっ!!」
扉に手を掛けて押し開けようとすると、大和が強い力で押し戻して抵抗する。
「オマッ!なっ!何やってんだよっ!?」
「だからっ!!ちょっと待てって!一旦閉めろって!」
バタン!と大きな音を立てて扉が閉まった。
思いもよらない大和の抵抗に驚いたが、すぐにその理由に察しがついた・・・
はは~ん、大和のヤツ、オナニーしてたなっ!
しばらくバタバタと部屋の中で音がして、シューッ!シューッ!とスプレーを吹き付ける音がする。
・・・ったく!そんなに気にしなくって良いのに・・・
お互い男なんだから、オナニーなんてして当然!別にオナニーの途中だろうが、兄弟なんだし、気にする事もねぇのに・・・
しばらくして、ようやく扉が開くと大和が照れ笑いを浮かべて顔を出す。
「も~ういいよっ!」
「ったく!かくれんぼかよっ!!」
大和の部屋に入ると、宝珠の香りに混ざって、ほんのりザーメンの香りが残っている。
「おまえさぁ・・・オナニーなんて俺もするんだから、兄弟なんだから気にするなよ!」
「あっ、やっぱバレてたぁ~?」
高校生にもなって、顔を真っ赤にし照れる大和は久しぶりに見た気がした。
「まっ、確かに、恥ずかしいとは思うけど・・・これからは気にすんなっ!」
「あはははっ・・・(汗)」
「で、本当に大丈夫かよ、体?」
さっきまで照れていた大和が表情を一変させて、深刻な顔で聞いてきた。
「あぁ、すまなかったな・・・実は今朝から調子が悪くって・・」
大和の顔色が曇る・・・
「お前の話もまともに聞いてやれなかったと反省してるんだ」
「俺の話・・・?」
「・・あの・・・本州に出逢いとか云々のさ・・・」
鳩が豆鉄砲を食らった顔とは、まさに今の大和の顔の事を言うのだろう。
「・・っ!バッあははははーっ!!」
「どうしたっ?何がおかしい??」
大笑いする大和に次は俺がハトになった。
「・・ひっ、ひぃーっ!あっ、兄貴、なに深刻に考えてるんだよーっ!!」
笑いがこみ上げて息も絶え絶えな感じで大和が続けて言う
「あ、あれは・・・ちがうのっ!違うんだよっ!!」
「えっ?何がちがうんだよ?」
「・・・はぁはぁ、あれはネ、兄貴が前に言ってた事なんだよ」
「おっ、俺が??」
今から約10年ほど前、小ガク生だった11歳の俺と、7歳の大和が『冒険』と称して、海岸で流木や流れ着いた浮輪を集めて筏を作り、
それで海を渡って本州に行こう!と、計画を立てた事があった。
その時の事を大和はずっと覚えてて、来年卒業する高校最後の思い出も兼ねて、もう一度筏を作って冒険の続きをしようと冗談交じりに話したのだった。
当時の俺は「島を出て、島の人間以外の人間と出逢う!」と、しきりに言っていたらしい。
それを、頭が朦朧としていた俺が、話を断片的にしか聞いておらず、まるで、大和が本気で「本州へ行く!」と言ってると勘違いしていたのだそうだ。
あまりに見当違いな答えを俺が言うもんだから、大和は俺の体調を心配していたという・・・
「でもさぁ、兄貴・・・昨日の事覚えてるの?」
「えっ?昨日の事?」
・
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・
・
「バスの中で全く目を覚まさないでさぁ~、なんとか家に運び込んで、マサが医者呼んだり、服着替えさせたり大変だったんだぜっ!」
大和の話によると、バスの中で気を失った俺を、大和は家までおぶって運んでくれてたそうだ。
記憶が曖昧な俺は、自力でベットに横たわったのだと思い込んでいたが、
本当は大和がベットまで運んでくれ、寝かせてくれたのだと聞いて、驚いた。
「えっ!?・・・」
ついこの間までは高校のアメフト部で、今もウエイトトレーニングを欠かさない大和、
同級生と比べても一二を争う大柄なガタイであることに違いはないが、所詮は高校生だからと、見くびっていた俺は、いつしか俺と同じくらいに逞しくなっていた大和に、巨体である自分が背負われ運ばれていたことに正直驚きを隠せずにいた。
「あれは夢?、幻覚だったのか・・・」
てっきり、学校から帰ってきて少し寝ただけだと思っていた俺は、
どうやら丸2日気を失っていたらしい・・・
「すまん、全然覚えてない・・・」
「だろうな・・・マッ、兎に角気がついて良かったよマジで」
そういえば着替えた覚えもないし、疲れきって寝た割には体も汗ばんでいない。
「それにしても、アイツは、マジむかつく!」
大和の言う「アイツ」とは親父の事だ。
「親父はまだ帰ってないのか?」
「あぁ、あと3日は帰ってこないってさ!」
仕事で一カ月ほど出ている親父は、『こんなこと』ぐらいでは帰ってはこない、いつものことだ・・・・。
「和人さま、大和さま、お食事はいかがなさいますか?」
雅哉が扉をノックして声を掛ける。
「あぁ!オレ腹ペコ!兄貴とすぐ行くよっ!」
正直、丸2日何も食べてなかった俺も、腹が減っていた。
ダイニングへ移動し雅哉にもこれまでの事を詫びた後、
いつもと変わらない大和のくだらない話を散々聞かされ、最後にTVの天気予報を見る。
日課というか、いつもの流れだ。
しかし、毎日毎日何をこんなに話す事があるのかと感心する。
「よし!明日は晴れるな兄貴!」
「だな」
「海いこうなっ!」
「おいおい、病み上がりだぞ俺(汗)」
「大丈夫だよっ!何かあったらオレが兄貴の看病してやるからっ!(笑)」
「看病って(苦笑)」
しばらくすると雅哉が声を掛けてきた。
「大和さま、和人さまはまだ、病み上がりでらっしゃいますし、明日はお庭のプールでよろしいのでは?」
「えぇーっ!せっかくの休みなんだからーっ、海だよっ!海っ!なっ、アニキ!」
押しの強い大和に雅哉と顔を見合わせ、
「お前は言いだすと聞かないからな・・・」
「やったーっ!海!海!」
海に囲まれた『新男大島』。
ぴょっこり瓢箪島みたく海から山が生えたような小さな島。
島のどこからでも海が見えるし、
家から潮騒が聞こえるほどの目と鼻の先には海があり、海に出かけること自体、別に珍しくもないが・・・
大和は俺と一緒に行きたいんだろう。
「まぁ、いいか」
俺の真意を見極めようとキラキラした目で凝視していた大和の表情が、
皺くちゃな笑顔に変わる。
「よっしゃー!!じゃぁ!マサ―っ!、支度頼むっ!」
「かしこまりました大和さま」
ベットの中で俺は昨日のことを思い出そうとしていたが、まるで思い出せず、
いつしか深い眠りに落ちて行った・・・・・。
「・・ニキ!アニキっ!!大丈夫かよっ!」
「・・園寺さまっ!西園寺様!・・」
「・・・おまえらっ!いいから俺の兄ちゃんに触るなーっ!!」
大和と大勢の人の声で目を覚ます!
「ゆ・・・夢か・・・」
どうやら、夢の中で記憶の何かを思い出したのだろう・・・
やはり俺は、バスの中で気を失っていたのだ。
窓から海の方に目をやると、
綺麗な月の光が波に反射しキラキラとイルミネーションのように輝いている。
時計は夜中の3時少し前をさしていた。
つづく・・・

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≪追記≫
さて、西園寺家の兄弟 和人と大和はこれからどうなるのでしょうね~?(*´▽`*)
小説が進むにつれ、『新男大島』の事や『宝珠』の事、それと、この島に隠された謎!?(笑)そして、二人を取り巻く『西園寺家の秘密』なども紹介していきますので、お楽しみに~♪
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